第2回アメリカと日本の高齢者向け医療保険の違い
- Manabu Kagiyama
- 6月9日
- 読了時間: 4分
アメリカと日本の高齢者向け医療保険の違い
老後の医療費は、生活の質を左右する重要な要素です。アメリカではメディケア、日本では**国民健康保険(後期高齢者医療制度)**が主な医療制度となります。以下、それぞれの特徴とカバレッジ(保障範囲)を比較します。
1. アメリカの高齢者向け医療制度:メディケア
メディケア(Medicare)は、65歳以上のアメリカ市民や永住者を対象とした連邦政府の公的医療保険です。
メディケアの基本構成
種類 | 内容 | 月額保険料 | 自己負担 |
パートA(入院保険) | 入院・介護施設・ホスピス | ほとんどの人は無料(40四半期以上の納税が必要) | 入院時の自己負担額:$1,632(約24万円)/60日まで(2024年) |
パートB(医療保険) | 医師診察・検査・予防医療 | $174.70/月(2024年) | 医療費の**20%**を自己負担 |
パートC(メディケア・アドバンテージ) | 民間保険会社のプラン(A+B+Cを統合) | プランによる($0〜数百ドル) | 自己負担はプラン次第 |
パートD(処方薬保険) | 処方薬のカバー | 平均$30〜$80/月 | 免責額・自己負担あり |
メディケアのカバレッジと制約
メディケアだけではカバーしきれない
パートAでは入院費の自己負担が高額
パートBでは医療費の20%を自己負担
歯科・眼科・補聴器は基本カバーされない
補助保険(Medigap / メディケア・アドバンテージ)を追加で契約する人が多い
Medigapを利用すると、自己負担が軽減されるが、月額保険料が増加
メディケア利用時の実例
心臓手術(バイパス手術):総費用 $100,000(約1,500万円) → メディケア適用後も約$20,000(約300万円)を自己負担
糖尿病の治療(インスリン治療):年間$3,000〜$5,000の自己負担
2. 日本の高齢者向け医療制度:国民健康保険と後期高齢者医療制度
日本の医療制度は全国民を対象とした公的医療保険制度で、高齢者向けには「後期高齢者医療制度」が用意されています。
後期高齢者医療制度の基本構成
項目 | 内容 |
対象 | 75歳以上(65〜74歳でも一定の障害がある場合加入可) |
保険料 | 年間約8〜15万円(収入に応じる) |
自己負担額 | 原則1割(現役並み所得者は3割) |
高額療養費制度 | 自己負担が一定額(1ヶ月上限57,600円〜)を超えると還付 |
介護保険との併用 | 介護サービスも利用可能 |
日本の医療制度のカバレッジ
診察・入院・手術・薬代など、ほぼすべてカバー
歯科・眼科・リハビリ・精神科治療も対象
定期検診・予防接種も安価で受けられる
高額療養費制度により、医療費の上限が設定されている
日本の医療制度利用時の実例
心臓手術(バイパス手術):総費用200万円 → 自己負担10〜20万円(高額療養費制度適用)
糖尿病の治療(インスリン治療):月額5,000〜10,000円(約$35〜$70)
3. アメリカと日本の高齢者医療制度の比較
項目 | アメリカ(メディケア) | 日本(後期高齢者医療制度) |
保険料 | パートB:$174.70/月(約2.6万円) | 月1〜2万円(収入に応じる) |
自己負担 | 診察・治療費の**20%**を自己負担 | 原則1割(現役並み所得者は3割) |
入院費 | $1,632(約24万円)/60日まで | 1日あたり1万〜2万円(高額療養費適用可) |
処方薬 | パートD加入が必要($30〜$80/月) | 基本的にすべてカバー(安価) |
歯科・眼科 | 対象外(追加保険が必要) | 基本的にカバー |
高額療養費制度 | なし(自己負担が青天井) | 1ヶ月上限57,600円(収入による) |
4. どちらが老後の医療制度として優れているか?
アメリカのメディケアのメリット・デメリット
メリット
65歳以上で加入できる
一定の医療費補助がある
高品質な医療を受けられる(病院の選択肢が多い)
デメリット
自己負担額が高い(入院・手術費用の負担が大きい)
補助保険(Medigap)が必要になる場合が多い
歯科・眼科・補聴器はカバーされない
高額療養費制度がなく、自己負担が青天井
日本の後期高齢者医療制度のメリット・デメリット
メリット
自己負担が1割と圧倒的に安い
医療費の上限(高額療養費制度)があり安心
歯科・眼科も含まれる
医療機関の選択肢が広く、診察費が安価
予防医療(健康診断・ワクチン接種)が充実
デメリット
75歳以上にならないと加入できない
一部の先進医療は自由診療となる
介護施設の入居待ちが発生する場合がある
5. まとめ:老後の医療制度を考えた場合、日本帰国は合理的か?
医療費の負担が少ないのは日本(1割負担+高額療養費制度)
入院・手術時の自己負担が少ないのは日本
予防医療(歯科・眼科・検診)の充実度が高いのは日本
アメリカでは補助保険に入らないと負担が大きくなる
リタイア後の医療負担を抑えたいなら、日本帰国は合理的な選択
老後の医療コストを抑えつつ、安心して過ごすためには、日本の後期高齢者医療制度を活用するメリットが大きい。メディケアでは自己負担が大きくなるリスクがあるため、老後の生活設計をする際には、医療費の違いを考慮することが重要となる。
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